免疫の基本構造から、ワクチンといった社会的行動までを一続きの仕組みとして捉えます。健康診断の数値や医師の指摘を「点」ではなく「流れ」として理解し、日常の健康管理にどう活かせるのかを、科学的に整理していきます。
はじめに
病院で薬を処方されたとき、薬剤師から「この薬は○○を抑える働きがあります」と説明を受けても、具体的にどういう仕組みで効くのかわからないまま飲んでいる人は多いのではないでしょうか。また、健康診断で「肝機能の数値が高い」と言われても、それが服用している薬と関係があるのかどうか判断できないこともあります。
この記事では、薬がどのように効くのか、なぜ副作用が起きるのか、そして私たちの体で起きているアレルギーや免疫の反応について、患者として知っておくべき知識を体系的にまとめました。単なる知識の羅列ではなく、「なぜそうなるのか」という科学的な背景を理解することで、日常の健康管理や医師とのコミュニケーションに活かせる内容になっています。
第1章 医薬品とは何か――効果とリスクは表裏一体
なぜ薬には必ず副作用があるのか
日本の法律では、医薬品を「病気の診断・治療・予防に使われるもの」および「体の構造や機能に影響を与えるもの」と定義しています。この定義が意味するのは、薬が効果を発揮するということは、必ず体に何らかの変化を起こすということです。
人間の体は複雑に絡み合ったシステムです。血圧を下げる薬を飲めば、意図した通り血圧は下がりますが、同時に脳への血流が減ってめまいを起こすかもしれません。花粉症の薬を飲めば、鼻水は止まりますが、同じ仕組みで唾液の分泌も減って口が渇くかもしれません。これは薬が悪いのではなく、体が複雑だからこそ避けられない現象です。
処方箋が必要な薬と市販薬の違い
医療用医薬品(処方薬)は医師の処方箋がなければ手に入りません。なぜかというと、効果が強い分、副作用のリスクも高く、患者一人ひとりの状態を見極めた上で使う必要があるからです。血圧の薬、糖尿病の薬、抗生物質などがこれに該当します。
一方、薬局で買える一般用医薬品(市販薬)は、長年の使用実績から比較的安全性が高いと判断されたものです。それでも第1類、第2類、第3類に分かれており、数字が小さいほど注意が必要です。第1類医薬品は薬剤師からの説明が義務付けられています。
トクホが「病気を治す」と言えない科学的理由
トクホ(特定保健用食品)や機能性表示食品は、しばしば医薬品と混同されます。「コレステロールを下げる」「血圧が高めの方に」といった表示を見ると、薬と同じように思えるかもしれません。
しかし、トクホが「病気を治す」と表示できないのには明確な理由があります。医薬品は病気の人を対象にした臨床試験で効果が証明されていますが、トクホは健康な人、またはグレーゾーンにいる人での試験しか行われていません。「健康な人の数値を少し改善する」ことと「病気を治療する」ことは、科学的には全く別のことなのです。
第2章 薬はどう効くのか――作用機序と薬の大分類
人類と薬の歴史――偶然の発見から科学へ
1928年、イギリスの細菌学者アレクサンダー・フレミングは、培養していたブドウ球菌のシャーレにカビが生えているのを見つけました。普通なら捨ててしまうところですが、フレミングはカビの周りだけ細菌が死んでいることに気づきました。これがペニシリンの発見です。
ペニシリンは第二次世界大戦中に実用化され、それまで致命的だった感染症で多くの命を救いました。フレミングと、実用化に貢献したハワード・フローリー、エルンスト・チェーンは1945年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。この発見が現代の抗生物質の時代を開きました。
同じように、多くの画期的な薬は偶然や執念深い観察から生まれました。しかし現代では、薬がどのように効くのかという作用機序を理解し、設計して作る時代になっています。
薬の作用機序――6つの基本パターン
薬の働き方は複雑に見えますが、基本的なパターンは6つに整理できます。自分が飲んでいる薬がどのタイプかを知ることで、なぜその飲み方をするのか、なぜその副作用が起きるのかが理解できるようになります。
パターン1:体のスイッチを押す薬(作動薬)
私たちの細胞には「受容体」というタンパク質があります。これは鍵穴のようなもので、特定の分子(ホルモンや神経伝達物質)が結合すると、細胞が反応を起こします。作動薬は、この鍵穴に入る人工の鍵のようなものです。
喘息で使う気管支拡張薬は、気道の筋肉にあるβ2受容体というスイッチを押します。すると筋肉が緩み、狭くなっていた気道が広がって呼吸が楽になります。心臓の薬の中には、心臓のβ1受容体を刺激して心拍数を上げるものもあります。
なぜ副作用が起きるかというと、同じ種類の受容体が体の別の場所にもあるからです。気管支を広げる薬が心臓の受容体も少し刺激すれば、動悸が起きることがあります。手の震えが出ることもあります。これは薬が完璧に「気管支の受容体だけ」を刺激することができないためです。
パターン2:体のスイッチにフタをする薬(拮抗薬)
拮抗薬は、受容体に結合するものの細胞の反応は起こしません。鍵穴に入る偽の鍵のようなもので、本物の鍵が入るのを邪魔します。
花粉症でよく使われる抗ヒスタミン薬は、このタイプの代表例です。アレルギー反応が起きると、肥満細胞からヒスタミンという物質が大量に放出されます。ヒスタミンはH1受容体に結合して、くしゃみ、鼻水、かゆみを引き起こします。抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが受容体に結合する前に受容体をブロックすることで、これらの症状を抑えます。
抗ヒスタミン薬には第1世代と第2世代があります。第1世代(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンなど)は脂に溶けやすい性質を持っているため、脳に入りやすく、脳のH1受容体もブロックしてしまいます。脳のヒスタミンは覚醒状態を保つ働きをしているため、これがブロックされると眠くなります。
第2世代(フェキソフェナジン、セチリジン、ロラタジンなど)は化学構造が改良され、脳に入りにくくなっています。そのため眠気が少なく、現在の主流となっています。花粉症の薬を「症状が出る前から飲む」ように指示されるのは、ヒスタミンが放出される前に受容体を先にブロックしておけば、より効果的だからです。
降圧薬の多くも拮抗薬です。β遮断薬は心臓や血管のβ受容体をブロックすることで心拍数を下げ、血圧を下げます。ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)は血管を収縮させる物質の受容体をブロックして、血管を広げます。
パターン3:体の中の工場を止める薬(酵素阻害薬)
私たちの体の中では、毎秒無数の化学反応が起きています。この反応を促進しているのが「酵素」というタンパク質です。酵素は特定の物質を別の物質に変える触媒として働きます。酵素阻害薬は、この酵素の働きを止めることで効果を発揮します。
コレステロールを下げる薬の代表であるスタチン(アトルバスタチン、ロスバスタチンなど)は、肝臓でコレステロールを作る酵素(HMG-CoA還元酵素)の働きを止めます。コレステロールの材料はあっても、工場が止まっているので作れなくなるわけです。
胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬:オメプラゾール、ランソプラゾールなど)は、胃の細胞で酸を作り出す酵素を阻害します。胃潰瘍や逆流性食道炎の治療に使われます。
なぜ定期的な血液検査が必要かというと、酵素は体のあちこちで働いているため、一つの酵素を止めると別の場所の代謝にも影響が及ぶ可能性があるからです。スタチンはまれに筋肉の細胞に影響し、筋肉痛や筋肉の障害(横紋筋融解症)を起こすことがあります。そのため、肝機能やCK(クレアチンキナーゼ)という筋肉の酵素の値を定期的にチェックします。
パターン4:敵を直接たたく薬――抗菌薬と抗ウイルス薬
このタイプの薬は、人間の細胞ではなく、外から侵入してきた病原体を直接攻撃します。
抗生物質の仕組み
ペニシリン系抗生物質は、細菌の細胞壁の合成を阻害します。細菌には細胞壁という硬い殻がありますが、人間の細胞にはありません。ペニシリンは細菌の細胞壁を作る酵素を止めるため、細菌は壁のない状態になり、やがて破裂して死にます。人間の細胞には細胞壁がないので、影響を受けません。これが選択毒性という考え方です。
セフェム系抗生物質(第1世代から第4世代まである)も同じように細胞壁合成を阻害しますが、世代が進むにつれて効果のある細菌の種類が広がっています。マクロライド系(クラリスロマイシンなど)は細菌のタンパク質合成を阻害し、ニューキノロン系(レボフロキサシンなど)は細菌のDNA複製を阻害します。
なぜ抗生物質は風邪に効かないのでしょうか。風邪の原因の90%以上はウイルスです。ウイルスは細菌とは全く違う構造をしており、細胞壁もなければ、自分でタンパク質を合成する装置もありません。ウイルスは人間の細胞に入り込み、その細胞の装置を使って増殖します。そのため、抗生物質の標的となる構造がないのです。
耐性菌の問題
抗生物質を途中でやめてはいけない理由は、耐性菌が生まれるからです。細菌の中には、たまたま遺伝子の変異で抗生物質を分解する酵素を持っていたり、抗生物質を細胞の外に排出するポンプを持っていたりするものがいます。抗生物質を飲むと、普通の細菌は死にますが、これらの耐性を持った細菌だけが生き残ります。
中途半端にやめると、この強い細菌だけが増殖し、次に同じ抗生物質を使っても効かなくなります。さらに悪いことに、細菌は「プラスミド」という小さなDNAの輪を通じて、耐性遺伝子を他の細菌に渡すことができます。こうして耐性菌が広がっていきます。これは個人の問題ではなく、社会全体の医療基盤を揺るがす問題です。
抗ウイルス薬の歴史と発見
抗生物質の成功に触発され、科学者たちはウイルスにも効く薬を探し始めました。しかしウイルスは細菌より遥かに小さく、人間の細胞の中でしか増殖できないため、ウイルスだけを攻撃する薬を作るのは非常に困難でした。
1960年代、アメリカの生化学者ガートルード・エリオンとジョージ・ヒッチングスは、ウイルスのDNA合成を選択的に阻害する物質を探していました。彼らが開発したアシクロビルは、ヘルペスウイルスのDNA合成酵素だけに作用し、人間の細胞の酵素にはほとんど影響しない画期的な薬でした。これが最初の実用的な抗ウイルス薬となり、二人は1988年にノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
1980年代にはHIVの流行に対してAZT(ジドブジン)が開発され、HIVのRNA逆転写酵素を阻害することでウイルスの増殖を抑えました。現在ではHIVは複数の薬を組み合わせることで、慢性疾患として管理できるようになっています。
1990年代には、インフルエンザ治療薬としてノイラミニダーゼ阻害薬(オセルタミビル:タミフル、ザナミビル:リレンザなど)が開発されました。ノイラミニダーゼはウイルスが細胞から飛び出すときに必要な酵素で、これを阻害することでウイルスの拡散を防ぎます。ただし、発症から48時間以内に飲まないと効果が限定的です。
2014年には、C型肝炎ウイルスのRNA合成酵素を阻害するソホスブビルが登場し、それまで治癒が困難だったC型肝炎が治る病気になりました。これは医学史上の大きな進歩でした。
2020年代には新型コロナウイルスに対してレムデシビル(RNA合成阻害)やモルヌピラビル(RNA変異誘導)などが開発されましたが、抗ウイルス薬の開発は今も続いています。
パターン5:体全体を調整する薬――ホルモン薬と免疫調整薬
ステロイドの発見と作用機序
1948年、アメリカの医師フィリップ・ヘンチは、重症の関節リウマチ患者にコルチゾンという物質を投与しました。すると、患者は劇的に改善し、歩けるようになりました。これがステロイドホルモンの医療応用の始まりです。ヘンチと、コルチゾンを抽出したエドワード・ケンダル、構造を解明したタデウス・ライヒシュタインは1950年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
ステロイドがなぜこれほど広範囲に効くかというと、細胞の中に入り、遺伝子の働きを直接変えるからです。ほぼすべての細胞にステロイドの受容体があり、ステロイドが結合すると、炎症を起こす物質(サイトカイン)の遺伝子発現が減り、炎症を抑える物質の発現が増えます。
なぜ急にやめると危険かというと、体は普段、副腎という臓器で自分のステロイドホルモン(コルチゾール)を作っています。外から長期間ステロイドを投与すると、体は「もう作らなくていい」と判断して副腎の機能が低下します。この状態で急にやめると、体に必要なステロイドが足りなくなり、副腎不全という命に関わる状態になります。血圧が下がり、ショック状態に陥ることもあります。
長期使用での副作用として、骨粗鬆症があります。ステロイドは骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを抑え、骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを促進するため、骨密度が低下します。また、糖の代謝にも影響し、血糖値が上がりやすくなります。免疫を抑えるため、感染症にかかりやすくもなります。
ただし、外用ステロイド(塗り薬)は皮膚から吸収される量が非常に少なく、全身への影響は限定的です。ステロイドは強さが5段階に分かれており、顔には弱いもの、体には強いものなど、部位によって使い分けます。適切に使えば安全で効果的な薬です。「ステロイドは怖い」という誤解から治療を拒否すると、かえって症状が悪化することがあります。
免疫抑制薬と抗がん剤
免疫抑制薬は、過剰な免疫反応を抑える薬です。自己免疫疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎など)や臓器移植後の拒絶反応を防ぐために使われます。
カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス)は、T細胞という免疫細胞の活性化を抑えます。代謝拮抗薬(メトトレキサート、アザチオプリンなど)は、細胞分裂に必要なDNA合成を阻害することで、増殖の速い免疫細胞の増殖を抑えます。
興味深いことに、これらの薬の一部は抗がん剤としても使われます。なぜかというと、がん細胞も免疫細胞も、共通して「速く増殖する」という特徴を持っているからです。メトトレキサートは低用量では免疫抑制薬、高用量では抗がん剤として使われます。
抗がん剤にはいくつかのタイプがあります。アルキル化薬はDNAに直接結合して損傷を与え、代謝拮抗薬はDNA合成を阻害し、微小管阻害薬は細胞分裂の装置を壊し、トポイソメラーゼ阻害薬はDNAの複製を妨げます。これらの薬は速く分裂する細胞を攻撃するため、がん細胞だけでなく、正常な細胞の中で速く分裂している細胞(毛根、消化管粘膜、骨髄など)も影響を受けます。これが抗がん剤の副作用(脱毛、吐き気、白血球減少など)の原因です。
近年では、分子標的薬という新しいタイプの抗がん剤が登場しています。これはがん細胞に特有の分子を狙い撃ちする薬で、イマチニブ(慢性骨髄性白血病)、トラスツズマブ(乳がん)などがあります。従来の抗がん剤より副作用が少なく、効果的です。
さらに画期的なのが免疫チェックポイント阻害薬です。がん細胞は免疫から逃れるために「攻撃しないで」という信号を出しています。この信号を受け取る免疫細胞のスイッチ(PD-1など)をブロックすることで、免疫ががん細胞を攻撃できるようにする薬です。これは「免疫を抑える」のではなく「免疫のブレーキを外す」治療で、一部のがんでは劇的な効果を示しています。この発見により、本庶佑教授が2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
パターン6:物理的・化学的に作用する薬
これらの薬は、受容体や酵素に作用するのではなく、単純な化学反応や物理的な作用で効果を発揮します。
胃酸を中和する制酸薬(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなど)は、酸性の胃酸とアルカリ性の薬が中和反応を起こします。これは中学校の理科の実験と同じ原理です。浸透圧性下剤(酸化マグネシウム)は、腸の中に水分を集めることで便を柔らかくします。活性炭は表面に無数の穴があり、毒素を物理的に吸着します。
これらの薬は比較的安全に見えますが、注意点もあります。制酸薬は胃酸だけでなく、一緒に飲んだ他の薬も中和してしまうことがあります。活性炭は毒素だけでなく、薬も吸着してしまいます。そのため、他の薬と時間をずらして飲む必要があります。
薬の大分類と代表例のまとめ
ここまで見てきた薬を、治療対象や作用で分類すると以下のようになります。
感染症治療薬
- 抗生物質:細菌感染(ペニシリン、セフェム、マクロライド、ニューキノロンなど)
- 抗ウイルス薬:ウイルス感染(アシクロビル、タミフル、ソホスブビル、レムデシビルなど)
- 抗真菌薬:カビの感染(フルコナゾール、イトラコナゾールなど)
生活習慣病の薬
- 降圧薬:Ca拮抗薬、ARB、ACE阻害薬、β遮断薬、利尿薬など
- 糖尿病薬:インスリン、メトホルミン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬など
- 脂質異常症薬:スタチン、フィブラート系、エゼチミブなど
アレルギー・免疫の薬
- 抗ヒスタミン薬:第1世代、第2世代
- ステロイド:外用、吸入、内服、注射
- 免疫抑制薬:シクロスポリン、タクロリムス、メトトレキサートなど
- 生物学的製剤:抗体医薬(抗TNFα抗体、抗IL-6抗体など)
がん治療薬
- 細胞傷害性抗がん剤:アルキル化薬、代謝拮抗薬、微小管阻害薬など
- 分子標的薬:イマチニブ、トラスツズマブなど
- 免疫チェックポイント阻害薬:ニボルマブ、ペムブロリズマブなど
精神・神経の薬
- 抗うつ薬:SSRI、SNRIなど
- 抗不安薬:ベンゾジアゼピン系など
- 抗精神病薬:定型、非定型など
- 抗てんかん薬、パーキンソン病薬など
消化器の薬
- プロトンポンプ阻害薬、H2ブロッカー(胃酸抑制)
- 制酸薬、粘膜保護薬
- 下剤、止瀉薬
自分が飲んでいる薬がどの分類に入るかを知ることで、その薬の役割や注意点がより明確になります。
第3章 ワクチン――免疫に記憶させる技術
免疫の記憶という仕組み
ワクチンは病気を治す薬ではなく、病気を予防する薬です。なぜ予防できるかというと、免疫システムには「記憶」という優れた機能があるからです。
一度水ぼうそうにかかった人は、二度とかかりません。これは免疫細胞が水ぼうそうのウイルスを記憶しており、次に同じウイルスが侵入してきたときに即座に攻撃できるからです。この記憶を持つ免疫細胞を「メモリーT細胞」「メモリーB細胞」といいます。
ワクチンは、弱くした病原体や病原体の一部を使って、実際の病気を起こさずに免疫に記憶させる技術です。言ってみれば、本番(病気)の前の予行演習です。
ワクチンの種類と特徴
生ワクチン
麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘、BCG(結核)などのワクチンは、病原体を弱毒化したものを使います。弱いとはいえ生きた病原体が体内で少し増殖するため、本物の感染に近い強い免疫反応が起きます。そのため免疫がしっかりつき、多くの場合は一生持続します。ただし、妊娠中や免疫抑制薬を使っている人には使えません。
不活化ワクチン
インフルエンザ、日本脳炎、ポリオ、B型肝炎などのワクチンは、死んだ病原体や病原体の成分(タンパク質)を使います。増殖しないため安全性は高いのですが、免疫の記憶が弱くなりやすく、複数回接種が必要です。また、追加接種(ブースター)で記憶を強化することもあります。
トキソイド(ジフテリア、破傷風)は、細菌が出す毒素を無毒化したもので、不活化ワクチンの一種です。
mRNAワクチンとウイルスベクターワクチン
新型コロナウイルスで一躍有名になったmRNAワクチンは、病原体そのものではなく、病原体の一部(スパイクタンパク質)を作る設計図(mRNA)を体内に入れます。すると体の細胞がその設計図を読んで、一時的にスパイクタンパク質を作り、免疫システムがそれを認識して記憶します。
なぜ開発が速かったかというと、病原体を培養して増やす必要がなく、遺伝情報さえわかれば数週間で設計できるからです。また、変異株が出てきても、設計図を書き換えるだけで対応できます。
ウイルスベクターワクチン(アストラゼネカ、ヤンセンなど)は、無害なウイルスに病原体の遺伝子を組み込んだものを使います。このウイルスが細胞に入ると、やはり病原体の一部が作られ、免疫が反応します。
集団免疫――なぜワクチンは社会を守るのか
感染症の広がりやすさは「基本再生産数(R0)」という数値で表されます。これは「1人の感染者が免疫を持たない集団の中で、平均何人にうつすか」を示します。インフルエンザのR0は2〜3、麻疹は12〜18です。
集団免疫が成立するためには、「1-1/R0」の割合の人が免疫を持つ必要があります。麻疹でR0を15とすると、1-1/15=93.3%、つまり約95%の人が免疫を持てば、流行は起きなくなります。なぜかというと、感染者が次の人にうつそうとしても、周りのほとんどが免疫を持っているため、感染が広がらないからです。
これは、ワクチンを打てない人(赤ちゃん、免疫不全の人、アレルギーのある人)を守ることにもつながります。周りの人が免疫を持っていれば、病気自体が流行しないため、ワクチンを打てない人も守られるのです。
ワクチンの副反応――リスクとベネフィットの比較
どんなワクチンにも副反応のリスクがあります。接種部位の痛みや腫れ、微熱、倦怠感などは、免疫システムが反応している証拠です。免疫細胞が活性化すると、炎症性物質(サイトカイン)が放出され、これが発熱や倦怠感を引き起こします。数日で治まり、これ自体は心配ありません。
まれな重篤な副反応として、アナフィラキシーがあります。これはアレルギー反応の一種で、全身の血管が広がり、血圧が急激に下がってショック状態になります。頻度は100万回接種に数回程度ですが、接種後15〜30分は医療機関で待機し、万が一の場合にすぐ対応できるようにしています。治療にはアドレナリン(エピペン)を使います。
一方、麻疹にかかると、1000人に1人が脳炎を起こし、死亡率は0.1〜0.2%(1000人に1〜2人)です。この比較から、ワクチンのリスクが病気にかかるリスクより遥かに小さいことがわかります。
ワクチン忌避の歴史的教訓
1998年、イギリスの医師アンドリュー・ウェイクフィールドは、医学雑誌「ランセット」にMMRワクチン(麻疹・おたふく・風疹)が自閉症を引き起こすという論文を発表しました。これを受けてイギリスのワクチン接種率は急落し、麻疹が再流行しました。
しかし、この論文は後に完全な捏造であることが判明しました。ウェイクフィールドは別のワクチンを売ろうとする企業から資金を受け取っており、データも改ざんしていました。2010年に論文は撤回され、ウェイクフィールドは医師免許を剥奪されました。しかし、この影響は今も残り、根拠のないワクチン不信が広がっています。
これは科学リテラシーの重要な教訓です。一つの論文だけで判断せず、複数の独立した研究で確認されているか、利益相反(金銭的な利害関係)はないか、を確認する必要があります。
参考:科学研究における利益相反や社会的影響については社会と科学技術で詳しく論じています
参考:情報の信頼性評価については批判的思考と情報リテラシー―情報に操られず、判断を自分の手に戻すをご覧ください
第4章 アレルギー――免疫の誤作動のメカニズム
なぜ免疫は無害なものを攻撃するのか
アレルギーは免疫が弱いのではなく、判断を誤っているのです。免疫システムは「自己」と「非自己」を区別し、「非自己」の中から「危険」なものを見つけて攻撃します。この判断は樹状細胞という免疫細胞が行います。
樹状細胞は、侵入してきた異物を取り込み、それが「危険」かどうかを判定します。細菌が持つ特有の分子パターン(病原体関連分子パターン)や、組織が傷ついたときに出る信号(危険信号)を感知すると、「これは危険だ」と判断します。本来、花粉や食べ物にはこれらの信号がないので、「危険ではない」と判断されるはずです。
しかし、何らかの理由で樹状細胞が誤って「危険だ」と判断すると、T細胞に間違った情報を伝えます。するとT細胞はB細胞に「IgE抗体を作れ」と指令を出し、アレルギー体質ができ上がります。なぜこのような誤認識が起きるのかは、完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境要因の両方が関わっていると考えられています。
アレルギー反応の4ステップ
最初にアレルゲン(花粉、食物など)が体内に侵入したとき、樹状細胞がこれを取り込み、T細胞に情報を伝えます。T細胞はB細胞に指令を出し、B細胞はIgE抗体という武器を大量生産します。このIgE抗体は、皮膚や粘膜に多く存在する肥満細胞の表面に結合し、次の侵入に備えて待機します。この段階では症状は出ません。これを「感作」といいます。警報装置を設置しただけで、まだ警報は鳴っていない状態です。
同じアレルゲンが再び体内に入ると、肥満細胞の表面で待機していたIgE抗体に結合します。複数のIgE抗体が同時にアレルゲンに結合すると、IgE抗体同士が「架橋」という橋を形成します。これが肥満細胞への信号となり、肥満細胞は活性化されます。
肥満細胞が活性化されると、「脱顆粒」という現象が起きます。細胞内に蓄えられていた顆粒(ヒスタミンなどの化学物質が入った袋)が一斉に放出されます。
放出されたヒスタミンは、周囲の組織のH1受容体に結合します。ヒスタミンは血管を広げ、血管から液体成分を漏れ出させる作用があります。鼻粘膜で起きれば鼻水、皮膚で起きれば腫れとかゆみ、気道で起きれば気管支が収縮して呼吸困難になります。これがI型アレルギー(即時型)で、数分から数時間で症状が出ます。
一方、IV型アレルギー(遅延型)は、IgE抗体ではなくT細胞が直接反応します。T細胞が活性化して炎症を起こすまでに時間がかかるため、24〜48時間後に症状が出ます。金属アレルギーや化粧品かぶれがこのタイプです。
アナフィラキシー――最も危険なアレルギー反応
アナフィラキシーは、アレルギー反応の中で最も重篤で、命に関わることがあります。食物、薬剤、ハチ毒などが原因で起こります。
アナフィラキシーのメカニズム
通常のアレルギーは局所的な反応ですが、アナフィラキシーでは全身の肥満細胞が一斉に活性化され、大量のヒスタミンなどが全身に放出されます。すると全身の血管が広がり、血管から水分が漏れ出します。血液中の水分が減ると血圧が急激に下がり、脳や心臓に十分な血液が届かなくなります。これがアナフィラキシーショックです。同時に、気道が腫れて呼吸困難になります。
症状は急速に進行し、数分から数十分で生命を脅かす状態になることがあります。皮膚の発疹、かゆみから始まり、呼吸困難、血圧低下、意識障害へと進みます。
なぜアドレナリン(エピペン)が効くのか
アナフィラキシーの治療に使われるのがアドレナリン(エピネフリン)の筋肉注射です。エピペンは患者が自分で太ももに注射できる自己注射薬です。
アドレナリンがなぜ効くかというと、広がった血管を収縮させて血圧を上げ、気管支を広げて呼吸を楽にするからです。また、肥満細胞からのヒスタミン放出も抑えます。アドレナリンは作用が速く、数分で効果が現れますが、持続時間は短いため、注射後は必ず救急車を呼んで医療機関を受診する必要があります。
食物アレルギーがある人、特に過去にアナフィラキシーを起こしたことがある人は、エピペンを常時携帯し、周囲の人(学校、職場)にも使い方を知らせておくことが重要です。
参考:緊急時の対応と社会システムについては社会と科学技術で論じています
アレルギーが増えている理由
衛生仮説とTh1/Th2バランス
免疫にはTh1細胞(細菌やウイルスと戦う)とTh2細胞(寄生虫と戦う)の二つのタイプがあり、互いにバランスを取っています。現代社会では、衛生環境の改善で寄生虫感染がなくなり、抗生物質や予防接種で感染症も減りました。すると、仕事がなくなったTh2細胞が、本来は無害な花粉や食べ物を「敵」と誤認識して暴走しやすくなるという説があります。
幼少期にさまざまな微生物に触れることは、免疫システムの正しい発達に重要です。腸内細菌も重要な役割を果たしています。腸内細菌は短鎖脂肪酸(酪酸など)を産生し、これが制御性T細胞という免疫を抑える細胞を誘導します。抗生物質の過剰使用や帝王切開の増加は、腸内細菌叢の多様性を減らし、アレルギー体質を増やしている可能性があります。
ただし、これは「不衛生にすべき」という意味ではありません。必要な衛生管理(手洗い、食品の安全管理など)は続けながら、過度に清潔すぎる環境(抗菌グッズの乱用など)を避けるという考え方です。
参考:生態系における微生物の役割については生態系と環境―私たちは「自然の外」にいるのかで詳しく解説しています
大気汚染のアジュバント効果
ディーゼル排気微粒子(DEP)は、それ自体はアレルゲンではありませんが、花粉と一緒に吸い込むと、IgE抗体の産生を数倍から数十倍に増やします。なぜかというと、DEPが気道の上皮細胞を傷つけ、炎症性物質を放出させるからです。これが樹状細胞を活性化し、「これは危険だ」という誤った信号を強めます。
参考:大気汚染と健康の関係についてはエネルギー資源と持続可能性でも触れています
経皮感作と経口免疫寛容
同じ物質でも、口から入るか皮膚から入るかで、免疫の反応が変わります。口から入った抗原は、腸の粘膜にいる特殊な樹状細胞が取り込み、制御性T細胞を誘導します。制御性T細胞は「これは食べ物だから攻撃しない」と他の免疫細胞に命令します。これを「経口免疫寛容」といいます。
一方、荒れた皮膚から入った抗原は、皮膚のランゲルハンス細胞(樹状細胞の一種)が取り込みます。皮膚は本来、外敵が侵入してくる場所なので、ランゲルハンス細胞は警戒モードで働きます。そのため「これは危険だ」と誤認識しやすくなります。
これが、アトピー性皮膚炎の子どもに食物アレルギーが多い理由の一つです。2015年に発表されたLEAP研究では、ピーナッツオイルを含むスキンケア製品を使っていた乳児にピーナッツアレルギーが多発した一方、早期からピーナッツを食べていた乳児ではアレルギーの発症が大幅に減少しました。これを受けて、現在では離乳食でのアレルゲン除去は推奨されず、むしろ早期摂取(生後5〜6ヶ月から)が推奨されています。
第5章 免疫抑制とがん治療――免疫のブレーキとアクセル
免疫が強すぎて困るとき
免疫は強い方が良いと思われがちですが、強すぎると自分の体を攻撃してしまいます。関節リウマチでは関節を、1型糖尿病では膵臓のインスリンを作る細胞を、全身性エリテマトーデスでは全身の組織を免疫が攻撃します。なぜこのようなことが起きるのかは完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境要因(感染症など)が組み合わさって起きると考えられています。
一つの仮説は「分子相同性」です。ある細菌やウイルスに感染すると、その病原体の一部が自己の組織と似ている場合、免疫が混乱して自己を攻撃し始めるというものです。また、制御性T細胞の機能不全も関与していると考えられています。
臓器移植後も、新しい臓器は「自己」ではないため、免疫が攻撃します。これを拒絶反応といい、防ぐために免疫抑制薬が必要です。
免疫抑制薬の作用機序
免疫抑制薬にはいくつかのタイプがあります。カルシニューリン阻害薬(シクロスポリン、タクロリムス)は、T細胞が活性化するときに必要な酵素(カルシニューリン)を阻害します。するとT細胞は活性化できず、免疫反応が起きません。代謝拮抗薬(メトトレキサート、アザチオプリン)は、DNA合成を阻害することで、増殖の速い免疫細胞の増殖を抑えます。
免疫抑制薬を使っている人は、感染症にかかりやすくなります。なぜかというと、免疫が抑えられているため、病原体と戦う力が弱まるからです。そのため、日常的な感染対策(手洗い、マスク)が特に重要になります。また、生ワクチンは使えません。生ワクチンは弱いとはいえ生きた病原体なので、免疫が抑えられている人では実際の感染症を起こす危険があるからです。不活化ワクチンは安全ですが、免疫が抑えられているため、抗体ができにくい可能性があります。
抗がん剤の作用機序と副作用
がん細胞の特徴は「制御なく増殖する」ことです。従来の抗がん剤は、速く増殖する細胞を攻撃する仕組みで作られています。アルキル化薬はDNAに直接結合して損傷を与え、代謝拮抗薬はDNA合成を阻害し、微小管阻害薬は細胞分裂の装置を壊します。
しかし、がん細胞だけが速く増殖しているわけではありません。毛根の細胞、消化管粘膜の細胞、骨髄で血液を作る細胞も速く増殖しています。そのため、これらの正常細胞も影響を受け、脱毛、吐き気、白血球減少などの副作用が起きます。
分子標的薬は、がん細胞に特有の分子を狙い撃ちするため、正常細胞への影響が少なくなります。イマチニブ(慢性骨髄性白血病)は、がん細胞だけが持つ異常なチロシンキナーゼを阻害します。トラスツズマブ(乳がん)は、HER2というタンパク質を過剰に持つがん細胞だけを攻撃します。
免疫チェックポイント阻害薬――免疫のブレーキを外す
がん細胞は免疫から逃れる巧妙な仕組みを持っています。がん細胞は「PD-L1」という分子を表面に出し、免疫細胞(T細胞)のPD-1という受容体に結合します。すると「攻撃しないで」という信号が伝わり、T細胞はがん細胞を攻撃できなくなります。これが免疫チェックポイントという仕組みです。
免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブなど)は、PD-1受容体をブロックすることで、この「ブレーキ」を外します。するとT細胞ががん細胞を再び攻撃できるようになります。これは従来の抗がん剤のように「がん細胞を直接攻撃する」のではなく、「患者自身の免疫ががん細胞を攻撃できるようにする」という新しい発想の治療です。
京都大学の本庶佑教授は、PD-1の発見と免疫チェックポイント阻害薬の開発により、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。一部のがん(悪性黒色腫、肺がんなど)では劇的な効果を示していますが、すべてのがんに効くわけではなく、また免疫を活性化しすぎることで自己免疫疾患のような副作用(免疫関連有害事象)が起きることもあります。
第6章 日常生活での健康管理――検査値の読み方を含めて
感染対策の科学的根拠
免疫を「強化」する食品やサプリメントが数多く売られていますが、科学的根拠は乏しいものがほとんどです。免疫システムは常にフル稼働しており、それ以上「強化」することはできません。できるのは、不要な負担をかけないことです。
参考:恒常性と免疫の関係については人体は精密機械ではない―保たれる生命システムで詳しく解説しています
手洗いが重要なのは、病原体の多くが接触感染で広がるからです。手についた病原体が口や鼻、目の粘膜に触れることで感染します。石鹸で30秒洗うことで、病原体の数を100分の1から1000分の1に減らせます。なぜ石鹸が効くかというと、ウイルスの多くは脂質の膜(エンベロープ)で覆われており、石鹸の界面活性作用がこの膜を壊すからです。
換気が効果的なのは、空気中に漂うウイルスの濃度を下げるからです。感染症は「ウイルスが1個入ったら必ず発症する」わけではなく、一定以上の量が必要です(感染成立量)。換気で濃度を下げれば、吸い込むウイルスの量が減り、感染成立量に達しにくくなります。
アレルギー対策と舌下免疫療法
アレルギーの基本は「避ける」ことです。なぜかというと、すでに免疫が記憶してしまった反応を完全に消すことは難しいからです。食物アレルギーでは、原材料表示を必ず確認します。微量でも反応する人がいるため、「○○を含む製品と同じ工場で製造」という表示にも注意が必要です。
近年注目されているのが舌下免疫療法です。スギ花粉症やダニアレルギーに対して、アレルゲンのエキスを毎日舌の下に投与します。なぜ効くかというと、舌の下の粘膜には制御性T細胞を誘導する特殊な樹状細胞がいるからです。少量のアレルゲンに繰り返し触れることで、この制御性T細胞が活性化され、「これは危険ではない」と他の免疫細胞に命令するようになります。
3〜5年かかるのは、一度できた免疫の記憶を書き換えるのに時間がかかるためです。約80%の患者で症状が軽減し、完全に治らなくても薬の量を減らせる効果があります。
薬を受け取るときの確認事項
薬をもらうときに必ず確認すべきことは、この薬は何のために飲むのか、いつ、どのくらいの期間飲むのか、飲み忘れた時はどうするのか、の3点です。また、医師や薬剤師に必ず伝えるべきことは、他の病院で処方された薬を飲んでいること、市販薬やサプリメントを使っていること、アレルギーがあること、妊娠中・授乳中であることです。
薬同士の相互作用の例として、ワルファリン(血液をサラサラにする薬)と一部の抗生物質を一緒に飲むと、出血しやすくなることがあります。なぜかというと、抗生物質が腸内細菌を殺し、腸内細菌が産生していたビタミンK(血液を固める因子を作るのに必要)が減るからです。
グレープフルーツジュースと一部の薬の相互作用も有名です。グレープフルーツに含まれる成分が、小腸で薬を分解する酵素(CYP3A4)を阻害するため、薬の血中濃度が上がりすぎて副作用が出やすくなります。Ca拮抗薬(降圧薬)、スタチン(脂質薬)、免疫抑制薬などが該当します。
健康診断の血液検査――薬との関係
健康診断で血液検査を受けると、さまざまな数値が出てきます。薬を飲んでいる人は、これらの数値と薬の関係を理解しておくことが重要です。
肝機能検査(AST, ALT, γ-GTP)
肝臓は薬を分解する主要な臓器です。多くの薬は肝臓で代謝され、体外に排泄されます。そのため、長期間薬を飲んでいると、肝臓に負担がかかり、肝機能の数値が上がることがあります。
AST(GOT)とALT(GPT)は肝細胞に含まれる酵素で、肝細胞が壊れると血液中に漏れ出します。ALTは主に肝臓に存在し、ASTは肝臓以外に心臓や筋肉にも存在します。そのため、ALTが高い方が肝臓の問題を反映しやすいといえます。γ-GTPはアルコールや薬剤で上がりやすい酵素です。
スタチン、メトトレキサート、抗てんかん薬など、多くの薬で肝機能が上がることがあるため、定期的なチェックが必要です。
腎機能検査(クレアチニン、eGFR)
腎臓は薬を体外に排泄する主要な臓器です。腎機能が低下していると、薬が体に溜まりやすくなり、副作用が出やすくなります。
クレアチニンは筋肉で作られる老廃物で、腎臓から排泄されます。腎機能が低下すると、血液中のクレアチニンが上がります。eGFR(推算糸球体濾過量)はクレアチニン値と年齢、性別から計算される腎機能の指標で、60未満だと腎機能低下、30未満だと重度の腎機能低下です。
腎臓から排泄される薬(抗生物質、糖尿病薬のSGLT2阻害薬など)は、腎機能に応じて用量を調整する必要があります。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は腎臓の血流を減らすため、長期使用で腎機能が悪化することがあります。
血糖値(空腹時血糖、HbA1c)
ステロイドを長期使用すると、血糖値が上がります。なぜかというと、ステロイドは肝臓で糖を作る作用を促進し、インスリンの効きを悪くするからです害薬など)は、腎機能に応じて用量を調整する必要があります。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は腎臓の血流を減らすため、長期使用で腎機能が悪化することがあります。
血糖値(空腹時血糖、HbA1c)
ステロイドを長期使用すると、血糖値が上がります。なぜかというと、ステロイドは肝臓で糖を作る作用を促進し、インスリンの効きを悪くするからです

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