自給自足って、実際どのくらい大変なの?— 一般家庭の消費量と自給に必要な本当の数字 —

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「自律して生きる」とは、自身の生活を支える資源を定量的に把握することから始まります。一般家庭の平均消費量と、食糧・エネルギーを自給する場合の必要量を比較。米・野菜から電力の確保まで。生存に必要なリソースを可視化し、依存脱却のための「生活インフラの設計図」を提案します。


食料の年間消費量

一般生活(日本の平均)

項目1人あたり/年4人家族/年備考
60kg240kg1日1合ペース
野菜約128kg約512kg1日350g(厚労省目安)
肉類15〜20kg60〜80kg加工肉含む
魚類15〜20kg60〜80kg
約180個約720個
大豆・豆製品5〜10kg20〜40kg

自給自足生活(必要量)

※主食・野菜は「不作時の安全係数」を含む

項目1人あたり/年4人家族/年備考
米(主食)120kg480kg1日2合換算
野菜150〜200kg600〜800kg保存分含む
200〜250個800〜1,000個鶏2〜6羽で自給可
肉類0〜10kg0〜40kg基本は購入
魚類0〜10kg0〜40kg自給は難易度高
大豆・豆類10〜15kg40〜60kg味噌づくり等を含む

健康に必要な野菜350g/日の内訳と自給可能性

厚生労働省が推奨する野菜摂取量は1日350g。この内訳と、家庭栽培での実現可能性を見ていきます。

野菜350gの推奨内訳

分類推奨量/日主な野菜例自給難易度
緑黄色野菜120gほうれん草、小松菜、トマト、ピーマン、人参★★☆(中)
淡色野菜230gキャベツ、白菜、大根、玉ねぎ、レタス、きゅうり★★★(やや難)

自給しやすい葉物野菜TOP5

野菜生育日数収穫量(1株)栽培の容易さプランター適性
小松菜25〜30日100〜150g
ほうれん草30〜40日80〜120g
リーフレタス30〜50日150〜200g
水菜20〜30日100〜150g
ルッコラ20〜30日50〜80g

ポイント: 葉物野菜は生育が早く、初心者でも成功しやすい。1ヶ月サイクルで計画的に植え替えれば、年間を通じて一定量を確保できます。

年間栽培カレンダー(葉物中心)

時期適した葉物収穫サイクル
春(3-5月)小松菜、ほうれん草、レタス月1〜2回
夏(6-8月)空心菜、モロヘイヤ、バジル月2〜3回
秋(9-11月)小松菜、水菜、ルッコラ月1〜2回
冬(12-2月)ほうれん草、春菊、小松菜(温室)月1回

試算: プランター10個(各30cm×60cm)をローテーションすれば、1日あたり50〜100gの葉物を通年確保することが可能です。


段階別・野菜の部分自給マップ

完全自給は難しくとも、段階的なアプローチで「できる範囲の自給」を実現できます。

レベル1:プランター栽培(1〜3個)

環境: ベランダ・窓際
面積: 0.1〜0.3㎡
自給可能量: 20〜40g/日(年間7〜15kg)
適した野菜: ミニトマト、バジル、小松菜、ラディッシュ

労力: 週1〜2回の水やり
初期投資: 5,000〜10,000円(プランター、土、苗)


レベル2:ベランダ集約栽培(5〜10プランター)

環境: 日当たり良好なベランダ
面積: 1〜2㎡
自給可能量: 50〜100g/日(年間18〜36kg)
適した野菜: 上記+ミニキャベツ、ピーマン、ナス、ネギ

労力: 週2〜3回の管理
初期投資: 20,000〜40,000円

ポイント: 野菜350g/日の約15〜30%を自給。購入量を減らし、新鮮な葉物を毎日食卓に。


レベル3:家庭菜園(10〜30㎡)

環境: 庭・市民農園
面積: 10〜30㎡
自給可能量: 100〜200g/日(年間36〜73kg)
適した野菜: 季節野菜のフルローテーション(根菜、葉物、果菜)

労力: 週3〜5回、1回30分〜1時間
初期投資: 50,000〜100,000円(土作り、支柱、網など)

ポイント: 野菜350g/日の約30〜60%を自給可能。大根、白菜などの大型野菜も栽培できる。


レベル4:本格畑(50㎡以上)

環境: 郊外・農村部の畑
面積: 50〜200㎡
自給可能量: 200〜350g/日以上(年間73〜128kg以上)
適した野菜: ほぼ全種類。保存用の芋類、根菜も大量栽培可

労力: ほぼ毎日、1〜2時間
初期投資: 100,000円〜(農具、資材、灌漑設備)

ポイント: 野菜350g/日の60〜100%を自給可能。家族4人分の野菜をほぼ賄える規模。


各レベルの比較表

レベル環境面積自給量/日自給率(350g基準)年間野菜収量労力/週
Lv.1プランター0.1〜0.3㎡20〜40g6〜11%7〜15kg1〜2時間
Lv.2ベランダ1〜2㎡50〜100g14〜29%18〜36kg2〜3時間
Lv.3家庭菜園10〜30㎡100〜200g29〜57%36〜73kg3〜5時間
Lv.4本格畑50〜200㎡200〜350g+57〜100%+73〜128kg+毎日1〜2時間

土を使わない栽培という選択肢

近年、土を使わない栽培技術が発展し、野菜工場の技術が家庭レベルにも浸透しています。

水耕栽培の仕組み

定義: 土を使わず、養液(水に溶かした肥料)で植物を育てる方法

基本構造:

  1. 養液タンク: 水と液体肥料を混合
  2. 栽培槽: 植物を支えるパネルやトレイ
  3. 循環ポンプ: 養液を根に供給し続ける
  4. LED照明(室内の場合): 光合成を促進
  5. エアポンプ: 根に酸素を供給

培地の例:

  • スポンジ(種まき用)
  • ハイドロボール(発泡煉石)
  • ココピート(ココナッツ繊維)
  • ロックウール(鉱物繊維)

家庭用小型野菜工場キット

市販製品の例:

  • 卓上型: 30cm×40cm程度、LED内蔵、1〜2万円
  • 棚型: 60cm×120cm、多段式、5〜10万円
  • 本格型: 冷蔵庫サイズ、温度・湿度管理機能付き、20万円〜

栽培可能な野菜: レタス、バジル、ルッコラ、小松菜、クレソンなど(葉物中心)

水耕栽培のメリット

メリット説明
省スペース室内の棚やキッチンカウンターでも栽培可能
通年栽培季節に左右されない、冬でも安定収穫
清潔土を使わないため虫が湧きにくい、室内でも快適
成長が早い養液を直接吸収するため、土栽培より1.2〜1.5倍速い
水の節約循環式なら土栽培の1/10程度の水量

デメリット・注意点

デメリット対策
電気代LED・ポンプで月500〜2,000円程度
初期投資キットで1〜10万円(DIYなら5,000円〜)
根菜は難しい大根、人参などは不向き。葉物・ハーブが中心
養液管理pH・ECの測定が必要(慣れれば簡単)

DIY水耕栽培の例

材料費5,000円以下で始める方法:

  1. プラスチックコンテナ(100円ショップ)
  2. エアポンプ(観賞魚用、1,000円)
  3. 液体肥料(ハイポニカなど、500円)
  4. スポンジ培地(100円)
  5. 発泡スチロール板(蓋用、100円)

設置場所: 日当たりの良い窓際なら照明不要


野菜工場という発想

大規模野菜工場: 完全閉鎖型の施設で、LED照明・空調管理のもと野菜を工業的に生産。日本では2000年代から本格化し、現在は全国に200施設以上。

特徴:

  • 無農薬栽培が可能
  • 年間14〜15回転の超高速生産
  • 天候・災害の影響を受けない

家庭への応用: 野菜工場の技術を小型化したのが家庭用水耕栽培キット。同じ原理で、卓上でも年間を通じてレタスやバジルを収穫できます。


電気・ガス・水道の年間消費量

一般家庭の年間消費量(日本標準)

電気

項目1人暮らし4人家族備考
年間使用量1,500〜2,000 kWh4,000〜5,000 kWh冷暖房・家電含む

ガス(都市ガス換算)

項目1人暮らし4人家族備考
年間消費量80〜120㎥300〜450㎥調理・給湯

※LPガスなら1世帯年間 150〜250㎥ 相当


水道

項目1人暮らし4人家族備考
年間使用量50〜70㎥200〜300㎥1日1人140L前後

自給自足に必要な電気・ガス・水

電気(オフグリッド or 最小限の接続)

自給レベル必要量(4人世帯)備考
完全オフグリッド120〜250 kWh/月(1,400〜3,000 kWh/年)冷蔵庫・照明中心
節約型(5〜10A契約)70〜150 kWh/月冷蔵庫+照明のみ
通常節約150〜300 kWh/月PC・洗濯機可

太陽光1〜3kW、蓄電池5〜10kWh が目安


ガス(自給はほぼ不可)

自給自足では以下が現実的:

  • 調理:薪/ロケットストーブ
  • 暖房:薪ストーブ
  • 給湯:薪ボイラー or ソーラー給湯器
  • ガスは補助的に LPガス 年間20〜50㎥相当 で済む

水(自給自足での必要量)

生活用水

項目1人/日1人/年4人/年
飲用・調理5〜10L2〜4㎥8〜16㎥
生活全体(節約)80〜120L30〜45㎥120〜180㎥

農業用水

※田んぼ+畑

項目1人の面積必要水量備考
田んぼ200㎡灌漑期 1日40〜60L/㎡年間 約50〜70㎥用水路が必要
畑50㎡1日0.5〜3L/㎡年間 約5〜15㎥夏季は増加

合計:自給自足1人あたり生活+農業で 40〜80㎥/年 が必要
→ 4人では 200〜320㎥/年

水源(自給例)

  • 井戸:最重要(深井戸なら年間制限なし)
  • 雨水タンク:1,000〜2,000Lを複数設置
  • 用水路:農業用のみ
  • 山水:水質検査が必要

総まとめ(最重要数値)

1人あたりの年間消費量(一般)

  • 米:60kg
  • 野菜:128kg(1日350g)
  • 肉:15〜20kg
  • 魚:15〜20kg
  • 卵:180個
  • 電気:1,500〜2,000kWh
  • 都市ガス:80〜120㎥
  • 水道:50〜70㎥

1人あたり 自給自足なら

  • 米:120kg
  • 野菜:150〜200kg
  • 卵:200〜250個
  • 電気:年間1,500〜3,000kWh(太陽光1〜3kW)
  • 調理・暖房:薪3〜5㎥
  • 生活+農業用水:40〜80㎥

部分的自給の現実的な目標(都市生活者向け)

項目プランター栽培ベランダ集約家庭菜園10㎡
野菜自給率6〜11%14〜29%29〜57%
年間収量7〜15kg18〜36kg36〜73kg
労力/週1〜2時間2〜3時間3〜5時間
初期投資5,000〜1万円2〜4万円5〜10万円

結論: 完全自給は困難でも、日常の野菜の15〜30%をベランダで賄うことは十分可能です。土を使わない水耕栽培なら、室内でも年間を通じて新鮮な葉物を収穫できます。


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