電気の正体―電圧・電流・抵抗が作る現代文明ー-S1-3-

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スイッチを押せば電気がつき、コンセントに差せば機器が動く。私たちは毎日当たり前のように電気を使っているけれど、電気はどこから来て、どんな仕組みで動いているのだろうか。この記事では、電磁気学の基本から出発し、家庭の電気、工場の三相交流、そして情報社会を支える弱電まで、すべてを一本の流れとして読み解いていきます。

電気とは何か

電気は目に見えないけれど、確実に存在し、運ぶことができるエネルギーです。水の流れに例えるとわかりやすいでしょう。高い所から低い所へ水が流れるように、電圧が高い所から低い所へ電気が流れます。

電圧は水でいえば高低差、つまり圧力のようなものです。電流は実際に流れる量を表します。そして電力は、電気が実際に仕事をする量です。100ワットの電球が明るいのは、たくさんの電力を使って光と熱に変えているからです。

ここではまだ、なぜ流れるのか、電子とは何かといった細かいことは気にしなくて構いません。まずは圧力と流れと仕事という構造をつかむことが大切です。

電気と磁気、別々の世界だった

18世紀まで、人類は電気と磁気を別々の不思議な現象として観察していました。電気といえば雷や、摩擦で生まれる静電気のこと。磁気といえば磁石が鉄を引き寄せる力や、方位磁針が北を指す現象のことでした。この2つは全く無関係だと思われていたのです。

ところが1820年、デンマークの科学者エルステッドが驚くべき発見をします。電線に電流を流すと、近くに置いた方位磁針が動いたのです。つまり電流は磁場を作る。さらに1831年、ファラデーが逆のことも成り立つと発見しました。磁石を動かすと、コイルに電流が流れる。磁場の変化は電流を生むのです。

これで世界が変わりました。電気と磁気は表裏一体で、互いに変換できる。動きがエネルギーを変換する。これが発電とモーターの原理です。今日の電気文明は、すべてこの発見から始まっています。

電気回路という現実世界

理想の世界では電線をつなげば電気が流れるだけですが、現実はもう少し複雑です。電気が流れるとき、3つの性格が登場します。

まず抵抗です。これは電気を流れにくくし、電気エネルギーを熱に変える性質を持ちます。電球やヒーター、トースターはこの原理で働いています。延長コードが熱くなるのも、細い銅線の抵抗が原因です。

次にコンデンサ。これは電気をいったんためてから出す部品で、急な変化を嫌います。電源を安定させたり、ノイズを取り除いたりするのに使われます。

そしてリアクトル、あるいはコイルと呼ばれる部品。これは電流の変化を嫌い、磁気としてエネルギーを保存します。モーターや変圧器の心臓部です。

電圧と電流と抵抗の関係は、オームの法則という簡単な関係で表せます。電圧は電流と抵抗をかけたもの。抵抗が大きければ電流は減り、電圧が高ければ電流は増えます。この関係さえ理解していれば、ほとんどの回路が説明できるのです。

電力は電圧と電流をかけたもので、これが電気代を決めます。同じ100ボルトでも、10アンペア流れる電気ストーブは1000ワット、0.5アンペアの扇風機は50ワットです。電気代は電力に時間をかけた電力量で決まるので、高電力の機器を長時間使うと電気代が高くなります。

直列と並列という二つのつなぎ方

電気回路には、部品をつなぐ基本的な方法が二つあります。直列接続と並列接続です。

直列接続は、抵抗を数珠つなぎにする方法です。電流は一本道を通るので、どこでも同じ量が流れます。ところが電圧は分配されます。抵抗が二つあれば、それぞれの抵抗で電圧が分かれて、合計すると元の電圧になります。合成抵抗は個々の抵抗を足したものになるので、抵抗が増えるほど電流は流れにくくなります。

並列接続は、抵抗を並べてつなぐ方法です。電圧はどの抵抗にも同じようにかかります。ところが電流は分配されます。それぞれの抵抗に流れる電流を合計すると、元の電流になります。合成抵抗は個々の抵抗より小さくなるので、並列にするほど電流は流れやすくなります。

家庭のコンセントは並列接続です。だからどのコンセントも同じ100ボルトで、一つの機器を使っても他のコンセントに影響しません。一方、古いクリスマスツリーの電飾は直列接続でした。一つの電球が切れると全体が消えたのは、電流の通り道が途切れたからです。

コンデンサとリアクトルが交流で重要な理由

コンデンサとリアクトルは、直流回路ではあまり目立ちませんが、交流回路では主役級の働きをします。

コンデンサは電気をためる性質を持っていますが、交流では充電と放電を繰り返します。電圧が変化するとき、コンデンサは電流を流そうとします。ところが不思議なことに、電圧と電流のタイミングがずれるのです。電流が先に変化し、電圧が遅れて変化します。

リアクトルは逆です。電流の変化を嫌うので、電流が遅れて、電圧が先に変化します。コイルに電流を流すと磁場ができますが、この磁場が変化を妨げるのです。

このタイミングのずれを位相のずれといいます。位相がずれると、電圧と電流をかけた見かけの電力と、実際に仕事をする電力が違ってきます。この比率を力率といいます。力率が悪いと、電流はたくさん流れているのに実際の仕事は少ないという無駄が生じます。

工場では大型モーターをたくさん使います。モーターはコイルの塊なので、力率が悪くなりがちです。そこで進相コンデンサという装置を使います。コンデンサとリアクトルは位相のずれが逆なので、うまく組み合わせると位相のずれを打ち消せます。これで力率が改善され、無駄な電流を減らせるのです。

接地という命を守る仕組み

電気工事で最も重要な安全対策の一つが接地、つまりアースです。接地とは、電気機器の金属部分を地面につなぐことです。なぜこんなことをするのでしょうか。

電気機器の内部で絶縁が壊れると、本来電気が流れてはいけない金属の筐体に電気が漏れることがあります。これが漏電です。このとき、筐体に触れた人の体を通って地面へ電気が流れると感電してしまいます。

ところが筐体が接地されていれば、電気は人の体ではなく接地線を通って地面に流れます。接地線は抵抗が小さいので、人の体より電気が流れやすいからです。さらに、大きな電流が流れることで漏電遮断器が働き、すぐに電源を切ってくれます。

接地抵抗という言葉があります。これは接地線と地面の間の抵抗のことで、小さいほど安全です。接地抵抗が大きいと、漏電したときに十分な電流が流れず、漏電遮断器が働かないかもしれません。だから電気工事では接地抵抗を測定して、基準以下になっているか確認するのです。

洗濯機、冷蔵庫、エアコン。水を使う機器や大きな金属筐体を持つ機器には、必ず接地が必要です。コンセントに三本目の線があるのは、これが接地線だからです。

電線の太さという見えない設計

電線には太いものから細いものまであります。なぜ太さが違うのでしょうか。それは流せる電流の大きさが違うからです。

電線には抵抗があります。細い電線ほど抵抗が大きく、太い電線ほど抵抗が小さくなります。大きな電流を細い電線に流すと、抵抗で大量の熱が発生します。この熱で電線の被覆が溶けたり、周りのものが燃えたりすると火災になります。

だから電線にはそれぞれ許容電流が決まっています。これは安全に流せる電流の上限です。20アンペアまで流せる電線に30アンペア流すのは危険です。電気工事士は、使う機器の電流を計算して、適切な太さの電線を選ばなければなりません。

ブレーカーが落ちるのも、この許容電流と関係があります。ブレーカーは電線を守る装置です。許容電流を超える電流が流れると、電線が燃える前に電源を切ってくれるのです。だから家庭で電子レンジとドライヤーとエアコンを同時に使うとブレーカーが落ちるのは、電線を守るための正常な動作なのです。

変圧器の二つの顔

変圧器には大きく分けて二つの種類があります。絶縁変圧器と単巻変圧器です。

絶縁変圧器は、一次コイルと二次コイルが電気的につながっていません。磁気だけでエネルギーを伝えます。だから一次側と二次側は完全に絶縁されていて、安全性が高くなります。柱上変圧器や家電製品のアダプターは、ほとんどが絶縁変圧器です。

単巻変圧器は、一つのコイルの途中から電気を取り出す方式です。コイルの一部を共用するので、小型で安価にできます。ただし一次側と二次側がつながっているので、絶縁されていません。だから安全性が求められる場所では使えません。

なぜわざわざ一次と二次を分けるのでしょうか。それは安全のためです。高圧側で漏電や故障が起きても、低圧側には影響しません。絶縁変圧器なら、高圧側の数千ボルトが低圧側に漏れてくることはないのです。これが電気を安全に使うための基本設計になっています。

三相交流のもう少し詳しい話

三相交流には、結線方法が二つあります。Y結線とΔ結線です。

Y結線は、3本の電線を一点でつないで星型にする方法です。中心点を中性点といい、ここを接地します。各相の電圧を相電圧といい、線と線の間の電圧を線間電圧といいます。線間電圧は相電圧の約1.7倍になります。だから相電圧が100ボルトなら、線間電圧は約173ボルトです。

Δ結線は、3本の電線を三角形につなぐ方法です。中性点はありません。線間電圧と相電圧が同じになります。

工場で使われる200ボルトの三相交流は、実は低圧配電線の線間電圧なのです。電柱から来る6600ボルトを柱上変圧器で降圧するとき、相電圧を115ボルト程度にすると、線間電圧が約200ボルトになります。この200ボルト三相を工場のモーターに使うのです。

家庭用の単相200ボルトは、三相交流のうち2本の線を使ったものです。だから家庭でも200ボルトのエアコンやIH調理器が使えるのです。

直流と交流を変換する技術

太陽光パネルは直流で発電します。電池も直流です。でもコンセントは交流です。この変換を行うのがインバーターという装置です。

インバーターは、直流を高速でオンオフすることで擬似的な交流を作ります。半導体のスイッチング素子を使って、1秒間に数万回も切り替えます。これで滑らかな交流の波形を作り出すのです。

太陽光発電システムでは、パネルで作った直流をインバーターで交流に変換し、そのまま家庭で使ったり電力会社の送電網に流したりします。これを系統連系といいます。余った電気を売ることができるのは、この技術のおかげです。

ただし系統連系には厳しい規制があります。周波数や電圧を正確に合わせないと、送電網全体に悪影響を与えるからです。だから太陽光発電システムの設置には電気工事士の資格が必要なのです。

電気自動車の充電器も同じ原理です。交流を直流に変換して電池に充電し、走るときは直流でモーターを回します。ハイブリッド車はさらに複雑で、エンジンで発電機を回して交流を作り、それを直流に変換して電池に蓄え、また交流に戻してモーターを回します。すべて電磁気学と回路技術の応用なのです。

なぜ交流なのか

電池は直流です。プラスからマイナスへ、一方向に電気が流れます。でも家庭のコンセントは交流で、電気の流れる向きが周期的に入れ替わります。なぜわざわざ複雑な交流を使うのでしょうか。

理由は単純で、直流では電圧を変えるのが難しいからです。遠くまで電気を送るとき、電線の抵抗で電力が失われてしまいます。これを防ぐには電圧を高くして電流を減らせばいいのですが、直流ではそれが大変でした。

交流なら変圧器で簡単に電圧を変えられます。変圧器の原理は電磁誘導そのもの。一次コイルに交流を流すと磁場が変化し、二次コイルに電圧が発生します。コイルの巻数比で電圧が決まるので、高電圧にも低電圧にも自在に変えられるのです。

発電所で作った電気を数十万ボルトまで上げて送電し、家の近くで100ボルトに下げる。これが交流が社会インフラとして選ばれた理由です。

三相交流という社会の骨格

家庭は単相交流ですが、工場や鉄道、大きなビルは三相交流を使っています。単相は電線が2本ですが、三相は3本の電線を使い、それぞれに位相が120度ずつずれた交流を流します。

何がいいかというと、電力が途切れにくいのです。単相だと電圧がゼロになる瞬間がありますが、三相なら常にどこかの相が電力を供給しています。さらにモーターを回すのに最適です。3つの磁場が順番に切り替わることで、回転磁界が自然に生まれます。これがモーターをスムーズに回転させるのです。

工場の大型機械、エレベーター、電車。これらはすべて三相モーターで動いています。三相交流は産業の骨格なのです。

家庭の電気はどう届くか

発電所から家庭のコンセントまで、電気は長い旅をします。まず発電所では、水力や火力、原子力でタービンを回します。タービンが回るとコイルが磁場を横切り、電磁誘導で交流が発生します。発電の最終段階は、どんな方法でも必ず電磁誘導なのです。

発電所で作られた電気は、変圧器で数万ボルトまで昇圧されます。電圧を上げると電流が減り、送電ロスが減るからです。鉄塔に張られた高圧線を通って遠くまで運ばれた電気は、変電所でいったん6600ボルト程度に降圧されます。

そして街中の電柱に取り付けられた柱上変圧器で、ようやく100ボルトや200ボルトに変換されます。ここから引込線を通って各家庭に入り、分電盤を経てコンセントに届くのです。

家庭内にはブレーカーや漏電遮断器、アースといった安全装置があります。電流が大きすぎたら遮断し、漏電を検知したら遮断し、万が一の感電を防ぐ。これらはすべて電磁気と回路の安全設計に基づいています。

強電と弱電の分業

同じ電気でも、目的によって強電と弱電に分かれます。強電はエネルギーを運ぶことが目的です。発電、送電、配電、モーター、変圧器。電圧は高く、電流は大きく、線は太くて重い。扱いを間違えると危険です。電気工事士が扱うのはこの領域です。

一方、弱電は情報を運ぶことが目的です。電子回路、通信、コンピュータ、センサー、インターネット、スマートフォン。電圧は低く、電流は小さく、線は細くて軽い。プログラミングや電子工作の世界です。

ただ、境界線はあいまいです。インバーターは200ボルトの交流をモーターへ送る強電側の仕事をしつつ、マイコンで精密制御する弱電側の仕事もしています。太陽光発電システムは、パネルからの直流を交流に変換する強電側の機能と、発電量を監視する弱電側の機能を併せ持っています。

どちらも同じ電磁気学の上に成り立っているのです。

情報は電気の新しい使い方

情報とは何でしょうか。それは電気をオンとオフ、強いと弱い、高いと低いで表現したものです。高電圧を1、低電圧を0として、この組み合わせで文字や画像、音声、動画のすべてを表現します。これがデジタル信号です。

コンピュータの正体は、トランジスタという半導体素子が数十億個集まったものです。トランジスタはオンとオフを切り替えるスイッチとして働き、これらが論理演算を行います。電磁気学と回路と約束事、つまりプロトコルが組み合わさって情報処理が実現します。

通信も同じです。電線、光ファイバー、電波。これらはすべて電磁気の伝播を利用しています。周波数を変調し、符号化して、情報を載せて運びます。インターネットは世界中の電気回路がつながったネットワークで、光ファイバーは光という電磁波で情報を運び、ルーターは電気信号を振り分ける装置です。

すべて、電磁気学の応用なのです。

電気は地続きの物語

電磁気学は式の学問ではなく、エネルギーの流れの学問です。電圧と電流と抵抗はどこにでもある基本構造で、電磁誘導は電気と磁気の相互変換を可能にしました。発電も送電も配電も、すべて電磁気の応用です。

家庭の電気も情報社会も、同じ地続きの世界にあります。発電所から変電所を経て家庭のコンセントへ。コンセントから充電器を通ってスマートフォンの半導体へ。すべてが電磁気学というひとつの物語でつながっています。

強電と弱電は、スケールが違うだけです。強電はエネルギーを運ぶ使命を持ち、弱電は情報を運ぶ使命を持つ。でもどちらも、電圧と電流の関係、電力の計算、電磁誘導という同じ原理で動いています。

電気工事士の資格は、強電の現場を安全に扱う技術を証明するものです。家庭やビルの配線工事、分電盤やブレーカーやアースの設置、単相や三相回路の理解、電気設備の保守と点検。でもその背後には、ここまで見てきた全体像が広がっているのです。

おわりに

次にスイッチを押すとき、次にコンセントに差すとき、次にスマートフォンを充電するとき。そこには電磁誘導が働き、交流が流れ、抵抗が熱に変わり、コンデンサが電圧を安定させ、三相モーターが回り、半導体が情報を処理しています。

電気は現代文明の血液です。見えないけれど、理解できる。そして使いこなせる。電気工事士はその血液を安全に扱うための第一歩なのです。公式を覚える前に、なぜそうなるかを理解しておけば、忘れにくくなります。あなたは今、電気の世界の地図を手に入れました。

※AI支援によって記事を作成しています。

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