「市民科学者」
科学技術が社会に深く浸透した現代においては、市民自らが科学的知識と批判力を身につけ、判断主体となることが不可欠である。「市民科学者」という言葉を提唱した高木仁三郎は、学術研究を職業とする者から市民科学者となって特に原子力利用についての問題提起を行った。
この原子力問題への警鐘は、2011年の福島第一原発事故という形で現実のものとなった。高木仁三郎が提起し続けた懸念は、痛ましい形で証明されることになったのである。
しかし、市民科学が取り組むべき課題は、原子力問題だけに留まるものではない。現代社会には、AI技術の急速な発展、気候変動への対応、遺伝子編集技術の応用、生物多様性の喪失など、市民の生活と未来世代に深刻な影響を及ぼしうる科学技術上の選択が山積している。これらの問題に対しても、行政や企業の利害から独立した立場での調査・研究が不可欠である。
今、私たちが目指すべきは、市民一人ひとりが科学リテラシーを身につけ、専門家任せにせず、自ら判断する力を持つことだ。
科学的知識と批判的思考力を備えた市民が増えれば、科学技術の選択において、真に持続可能な社会への道筋を見出すことができるだろう。その先に、私たちは明るい未来を展望できるはずである。


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