I. 科学的探究とシステム思考の基礎
科学的探究は、証拠と論理的な考え方に基づいて行われ、間違っている可能性を常に考慮する姿勢が土台にある。観察や実験で得られる情報には、測定誤差や偏りが含まれるため、科学では不確実性を数値で表し、結論の信頼度を判断する。
データ解析では、平均値、中央値、分散などの基本的な指標と、グラフによる可視化を用いる。正しい結論のためには、対象をよく代表する標本と、偏りの少ない調査設計が重要である。
二つの事柄が同時に変化していても、相関関係があるだけでは因果関係とは言えない。第三の要因が影響している場合もある。
数学は自然現象を抽象化して扱うための道具であり、比例や指数的な変化などを式やグラフで表すことで予測が可能になる。
システム思考では、物事を複数の要素が関係し合って動くまとまりとしてとらえる。システムには入力と出力があり、その内部には処理の流れが存在する。システムの動きを左右するのがフィードバックである。変化を抑える働きは安定化につながり、変化を強める働きは増幅や暴走につながる。
単純なルールの積み重ねでも、複雑な動きや予測しにくい変化が生まれる。多くのシステムは時間とともに、全体としては保たれた状態に近づき、物質やエネルギーの総量は一定に保たれる。
II. 物質とエネルギーの変換システム
身のまわりの物質は、約百種類の元素からできている。元素は中心にある原子核と、その周囲を動く電子から成り、電子の配置によって物質の性質が決まる。
物質は温度や圧力によって固体、液体、気体の状態をとり、粒どうしの引きつけの強さが状態や性質を左右する。
化学反応では、物質が別の物質に変化する際にエネルギーが出入りする。触媒は反応を速くするが、自身は変化しない。反応速度は温度や濃度などで変わる。
核反応は、原子核そのものが変化する反応であり、化学反応より大きなエネルギーを生む。放射性の原子は一定の割合で減り続ける性質があり、これを利用して年代を推定する方法がある。核分裂は発電に利用されているが、放射性廃棄物の問題が残る。核融合は太陽のエネルギー源だが、地上での利用は難しい。
エネルギーの総量は変わらないが、形を変えて移り変わる。その過程で一部は熱として広がって失われたように見え、無秩序の度合いが増える。
電気と磁気は密接に関係しており、電荷が動くと磁場を生み、磁場が変化すると電場が生まれる。この仕組みが光を含む電磁波である。物質は、電気が通りやすいもの、通りにくいもの、その中間で条件によって性質が変わるものに分けられる。半導体は電子機器の基盤となる材料である。
現代社会のエネルギーの多くは化石燃料に依存しているが、消費が供給を上回ると不足につながる。太陽エネルギーは植物の光合成や気象に関わる基本的なエネルギーであり、再生可能エネルギーの活用が重要である。
人類は火の利用から始まり、金属、合金、プラスチックなどを作り出してきたが、分解されにくい材料は廃棄物として問題を生む。
III. 生命と進化の自己複製システム
すべての生命は約四十億年前の共通の祖先から進化してきた。生命の基本単位は細胞であり、細菌のような単純なものから人間のような複雑な生物まで、細胞の働きによって生命が保たれている。
DNAには遺伝情報が記録されており、この情報に基づいて体を作るたんぱく質が作られる。たんぱく質の多くは体内で反応を進める役割を担う。
進化の中心となる仕組みは自然選択である。個体には遺伝的な違いがあり、その違いが生存や繁殖に影響する。有利な性質を持つ個体は多く子孫を残し、集団は世代とともに変化する。この違いは突然変異などによって生まれる。
化石や体のつくりの比較、DNA配列の比較から、すべての生物が共通の祖先から進化したことがわかる。
生態系では、植物が太陽光を使ってエネルギーを作り、それが動物や菌類に受け渡される。最後には分解者が有機物を無機物に戻し、物質の流れが循環する。
生態系は変化しながらも保たれた状態を維持しているが、森林の減少や汚染などの人間活動によって大きく乱されることがある。
高等生物には、食べ物を分解して吸収するしくみ、酸素を取り入れるしくみ、血液を運ぶしくみ、情報を伝えるしくみなどがあり、これらが協力して生命を保つ。また、体の状態を一定に保つしくみや、病原体から守るしくみもある。
健康は運動、食事、睡眠、ストレス管理などの習慣に左右され、医療や感染症対策も重要である。老化はすべての生物に起こる自然な変化であり、健康に生活できる期間をいかに延ばすかが社会の課題となっている。


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