大学設置基準
日本のすべての大学は、文部科学省が定める「大学設置基準」に基づいて設置・運営されている。
この基準で、教員数、校地・校舎面積、教育課程、学生数など、大学運営の最低基準を規定している。
ここで重要となるのがST比(Student-Teacher Ratio:学生-教員比)である。
学生数に応じて必要な専任教員数が定められるが、学部・分野によってその考え方は大きく異なる。
分野別ST比較
一般的な傾向として、以下のような構造が見られる:
文系(法・経・文など)
- ST比:25〜35
- 理由:講義中心の授業形態、実験施設が不要
理工系(理・工・農)
- ST比:10〜18
- 理由:実験・演習が必須、安全管理の必要性
医歯薬系
- ST比:3〜10
- 理由:実習・臨床指導、国家資格要件の厳格性
理工系はコスパが悪い
理工系は文系と比較すると、以下の点でコスト構造が根本的に異なる
| 項目 | 文系 | 理工系 |
|---|---|---|
| 実験設備 | ほぼ不要 | 高額な装置と定期的な更新 |
| 消耗品 | 少額 | 薬品・部材など多額 |
| 技術職員 | ほぼ不要 | 安全管理等で必須 |
| 教員配置 | 少数で対応可能 | 多数必要 |
| 校舎面積(設置基準) | 基準値 | 約2倍 |
大学設置基準では、理工系学部の校舎面積基準が人文系の約2倍に設定されている。
これは実験室、演習室、設備室などの専用スペースが不可欠であることを制度的に認めたものである。
このため、同じ学生数でも教育に要する実質コストは理工系の方が圧倒的に高い。
学生1人あたり教育費
概算での年間・学生1人あたり教育費は以下の通り:
- 文系: 80〜120万円(主に教員人件費)
- 理学: 200〜300万円(実験設備・人件費)
- 工学: 180〜280万円(装置・消耗品)
- 農学: 200〜350万円(実習・施設維持)
- 医学: 600〜1,000万円超(臨床・実習指導)
理工系は文系の2〜3倍の教育コストを要する構造となっている。
国立大学と私立大学
国立大学でST比が低くなる背景には、まず歴史的な経緯がある。
国立大学は制度上、教育・研究・社会貢献に求められる。
国立大学は学生の授業料収入が全体の1〜2割程度にとどまり
残りは国からの運営費交付金で賄われている。
交付金が教員人件費を下支えしているため、学生数が増えなくても教員数の維持が可能である。
つまり、ST比が低くても経営が破綻しない。
特に旧帝大は、国を代表する研究機関としての側面が強く、
授業を持たない教員や附置属研究所が存在し、
学部学生だけで割るとST比が低く算出される傾向がある。
一方、私立大学は収入の7〜8割を授業料に依存しており、
教員人件費が最大のコストとなっている。
教員を増やすことは即座に経営リスクとなるため、大学設置基準近傍に抑える。
多くの私立大学は学部教育を中心とした教育機関であり、大学院の比率が低い。
その結果、教員は授業担当者としての役割が中心となり、研究専任的な余裕がない。
こうした構造的な理由から、私立大学にはST比を下げるインセンティブが乏しい。
例外もあり、医学部・薬学部・看護系では国立並みに低いST比を実現している。
数字で見ると
文系学部では国立が10〜15程度、私立が25〜35程度
理工系では国立が5〜10程度、私立が15〜25程度という傾向がある。
本質的には
国立大学は「教員を基準に学生を受け入れる」のに対し、
私立大学は「学生を基準に教員を配置する」
という構造がある。
4. 財源構造
国立大学
所管: 文部科学省
主な財源:
- 運営費交付金(国費)
- 授業料
- 競争的資金(科研費等)
想定される経費から授業料などの収入を引いた額を運営費交付金の額とする。
理工系の高コストな教育についても国が支えている。
ただし、2004年の法人化から運営費交付金は減少傾向にある。
公立大学
所管: 地方自治体
主な財源:
- 地方交付税
- 授業料
公立大学は教育政策というより地域政策・人材確保政策として位置づけられる。
公立大学の運営経費は交付税の基準財政需要額に算入され、地方交付税として交付
地方交付税の使途は自治体の自主的な判断に任せられている 。
そのため、基準財政需要額を100とした場合、
110%以上投じている大学もあれば、90%未満しか配分されていない大学も存在する
私立大学
所管: 学校法人
主な財源:
- 授業料(主)
- 私立大学等経常費補助金(私学助成)
- 寄付・資産運用
多くの私立大学が私学助成の交付を受けているが、主な財源は学生からの授業料である。
※AI支援によって記事を作成しています。


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