工学部とは何か――理学の応用から社会実装へ、その成立と教育の現在地

この記事は約7分で読めます。

工学は本来、大学の外にあった「職人の知」から出発した学問である。18〜19世紀の制度化を経て総合大学に組み込まれたが、その教育設計はいまも過渡期にある。工学部の歴史とカリキュラムをたどり、現代的課題を明らかにする。

工学部とは何か

工学部とは、

数学・自然科学(物理・化学など)を基礎として、
社会に役立つ技術・構造物・システムを
設計・実装・運用するための学問体系

を教育・研究する学部である。

  • 理学部:自然法則の解明(Why)
  • 工学部:自然法則の利用と社会実装(How)
  1. 理学部とは目的・学習感覚・負担感が異なり、「わかりにくさ」や「途中変更/離脱」が比較的起こりやすい
  2. 「就職・資格・実務寄与」では強みがある一方で、入り口の数学・物理の段階で躓く学生も多い。

工学部の成り立ち

中世:大学の誕生(12〜13世紀)

年代出来事大学の性格工学の位置
1088頃ボローニャ大学法学中心大学外
1200頃パリ大学神学中心大学外
13世紀オックスフォード、ケンブリッジ自由学芸+神学大学外
  • 大学=聖職者・法律家養成
  • 技術=職人ギルド・徒弟制
  • 手を使う知は「学問」ではなかった

18世紀:工学教育の制度化(啓蒙・革命期)

年代出来事特徴工学の性格
1747エコール・デ・ポン・ゼ・ショセ土木官僚養成国家工学
1794エコール・ポリテクニーク数学+物理理論工学
18世紀後半鉱山学校の整備資源開発実務重視

工学の源流は職業学校 技術学校 ポリテクニックという「大学」ではなく専門学校でした。学問としての正統性は理学であった。

欧米において工科大学の成立します。

19世紀前半〜中葉

  • 1824 レンセラー工科大学(米)
  • 1847 チューリッヒ工科大学(ETH)
  • 1851 王立工科大学(KTH, スウェーデン)
  • 1861 MIT(米)

工学は「理学の応用」として学問として認められ始めます。ただし、工科大学はまだ大学と微妙に格が違ったようです。

年代出来事特徴意味
1862モリル法(米)実学重視大学工学正統化
1877東京大学設立工部大学校統合日本型工学部
19世紀末電気・機械工学新産業工学の細分化
  • 明治日本が総合大学の中に、工学部を理学部と並列で設置しました。
  • 19世紀後半において、近代的工学教育を総合大学の中核として組織化した最初期の例の一つ

と総合大学のなかで歴史が浅い学部である。

モリル法:全米各地に州立大学設立をうながす法律であるが、学問領域として農業と工業を重点におく目的があった。


3. 最近の傾向:単一学科化と領域制

現在、工学部は

  • 機械工学科
  • 電気電子工学科
  • 化学工学科
  • 土木工学科

といった 細分化学科を廃し

「工学部 ○○学科(単一学科)」複数の領域・コース・プログラム

という形を傾向が強い。単一学科化の理由は下記があげられる。

  • 技術の融合・高度化
  • 境界領域の拡大
  • 教育の柔軟化
  • 学生の進路多様化

4. 工学部の骨格

基礎分野

高校数学・理科
   ↓
大学基礎数学
  ・微分積分
  ・線形代数
  ・微分方程式
   ↓
基礎自然科学
  ・力学
  ・電磁気
  ・熱力学
  ・化学
   ↓
工学専門

5. 専門分野

機械系

  • 材料力学
  • 流体力学
  • 熱力学
  • 機械力学
    + 制御・設計・生産

電気・電子系

  • 電磁気学
  • 回路理論
  • 電子回路
  • 半導体
    + 電力・通信・計測・情報

化学系

  • 物理化学
  • 有機化学
  • 無機化学
  • 分析化学

土木・建設系

  • 構造力学
  • 地盤工学
  • 水理学
  • 測量
    + 防災・都市・環境インフラ

工学部カリキュラム(日本でも最も小さい工学部を例に)

  • 区分:◎必修/○選択必修(推測)/△選択(推測)
  • 「基礎となる科目」はスパイラル構造に基づく学習上の前提

No科目名分野区分基礎となる科目・関連の強い科目
1情報リテラシー基礎高校情報
2現代工学概論共通高校理科全般
3工学リテラシー共通高校理科・数学
4微分積分学基礎数学III
5線形代数基礎数学C(ベクトル)
6ベクトル解析基礎微分積分学・線形代数
7解析(級数・複素関数)基礎微分積分学
8常微分方程式基礎微分積分学
9偏微分方程式基礎微分積分学・解析
10確率・統計基礎数学B
11フーリエ解析基礎解析・線形代数
12力学基礎物理(力学)
13電磁気学基礎物理(電磁気)
14化学基礎化学基礎・化学
15熱力学基礎物理(熱)
16流体基礎機械力学
17材料力学基礎機械力学
18材料力学機械材料力学基礎
19応用熱力学機械熱力学
20機構学機械力学
21機械振動学機械機構学・力学
22伝熱工学機械熱力学
23流体解析機械流体基礎・偏微分方程式
24流体応用機械流体基礎
25弾塑性力学機械材料力学
26トライボロジー機械材料力学
27金属材料工学機械化学・材料力学
28加工プロセス工学機械金属材料工学
29機械加工学機械加工プロセス工学
30図学と製図機械空間認識
31CAD基礎機械図学と製図
32設計情報工学機械CAD基礎・プログラミング
33メカトロニクス機械制御工学基礎
34光学物質電磁気学
35量子力学物質力学
36統計力学物質熱力学・確率統計
37量子材料工学基礎物質量子力学
38物性工学物質統計力学
39物質の電磁気学物質電磁気学
40有機化学物質化学
41無機化学物質化学
42分析科学物質化学
43高分子科学物質有機化学
44生物工学物質有機化学・分析
45半導体量子構造物性物質物性工学
46磁気工学物質物質の電磁気学
47表面・界面科学物質化学
48プログラミング技法電子高校情報
49アルゴリズムとデータ構造電子プログラミング
50離散数学電子線形代数
51制御工学基礎電子常微分方程式・線形代数
52電気回路工学電子電磁気学
53電子回路工学電子電気回路工学
54ディジタル論理回路電子電気回路工学
55コンピュータアーキテクチャ電子論理回路
56情報理論電子確率・統計
57現代制御理論電子制御工学基礎
58電気工学電子電気回路工学
59半導体デバイス工学電子電子回路・物質の電磁気
60信号処理電子フーリエ解析
61人工知能電子プログラミング・確率統計
62数値計算法共通微分積分・線形代数
63システム工学共通数値計算法
64品質管理工学共通確率・統計
65経営管理工学共通
66トヨタ生産方式概論共通品質管理工学
67国際標準化戦略論共通

どこの大学も科目はほとんど変わりません。ただし“講義の濃さ”と“整理のされ方”には差があるかもしれませんが。


工学教育と工場の実態のミスマッチ

1. 配属先と教育内容の不一致

項目実態
主な配属先工場・生産現場
大学教育学術・理論中心
欠落工場運営・統合知

教員も学術畑で、工場の運営について知るものはほとんどいません。

工学部でも研究開発に行く場合にはこれでもいいのかもしれませんが、生産技術、品質になるとOJTでの教育となります。

工場はこうして社会を支えている ― 7つの柱で読み解く工場システムの全体像

2. 資格・法規・規格教育の欠如

現場で必須大学での扱い
労働安全衛生法原則未教育
各種主任者資格対象外
ISO・JIS未履修
環境・品質規制断片的

技術系・医療系の国家資格を根拠法と受験条項をまとめてみた

「消費者の安全」を守る仕組みにはどのような資格・法律・インフラが関わっているのだろうか

3. 品質管理・工程管理の非体系化

現場手法大学での位置づけ
PDCAノウハウ扱い
5S教育外
企業研修
SPC・FMEA未教育

4. 付属施設の位置づけ

項目医学部工学部
附属施設病院加工場
実習必修限定的
資格国家資格なし
法・倫理中核周辺

まとめ

工学部教育は、研究開発によっており、卒業後の主要な配属先である工場の管理、運営で必須となる資格や法規、規格、品質管理、工程管理といった領域を体系的に扱っていない。授業内容は要素技術が多く、技術が社会の中でどのような条件のもとに運用されているかを学ぶ機会が乏しい。この点で、臨床実習と附属病院を中核に据える医学部教育とは制度設計が大きく異なっている。

※AI支援によって記事を作成しています。




コメント

タイトルとURLをコピーしました