旧帝国大学と地方国立大学にはどのような違いがあるのか―戦前から続く高等教育の階層構造

この記事は約9分で読めます。

日本の大学は、名称こそ同じでも教育・研究力に大きな差がある。その背景には、戦前に形成された高等教育の階層構造と、戦後改革による「一斉大学化」がある。本稿では、帝国大学・地方国立大学の歴史的役割を整理し、予算・学生数・研究費・大学院体制から日本の高等教育の実像を読み解く。


戦前からの高等教育機関

日本の高等教育機関は、戦前からすでに明確な階層構造になっていた。

戦前の官立高等教育機関の設立を年表にしてみた(1868–1949)

  • 帝国大学
    国家の研究・人材育成拠点として設立
    → 博士授与権、大学院、講座制(教授1:助教授1:助手2)を前提
  • 旧制専門学校
    実務教育・中等以上教育を担う
    → 完成教育。一部は帝国大学へ進学する「傍系ルート」も存在してはいた

戦前に日本はどのような教育制度を作ったのだろうか


戦後の学生改革と「大学化」

戦後、学制改革により多くの高等教育機関が「大学」になった。

  • 大学 → 新制大学
  • 工業専門学校 → 近隣の学校と統合して新制大学の工学部
  • 高等農林学校 → 近隣の学校と統合して新制大学の農学部
  • 旧制高校 → 大学の教養学部・理学部の基盤

しかし、敗戦直後なので敷地・教員数・予算は増えないまま大学化した。

GHQは何を目指して戦後の教育改革を行ったのだろうか

その結果、

名称は同じ「大学」でも、研究機関としての成熟度は大きく異なった


運営費交付金(基盤的経費)

国立大学の基礎体力を決める運営費交付金

学生数と教職員数(規模):単純な組織の大きさがベース

附属病院の有無:医学部を持ち、大学病院を運営している大学は、その維持費として交付金

「重点支援」の区分:各大学を「世界的な研究」「地域貢献」などの枠組みで評価し、成果が高い大学に厚く配分

運営交付金ランキング(推定)

順位大学名(法人名)配分額(目安)特徴・備考
1位東京大学約840億円国内最大。2位に圧倒的な差をつけています。
2位京都大学約565億円指定国立大学法人の筆頭格。
3位東北大学約407億円国際卓越研究大学の第1号候補。
4位大阪大学約398億円阪大単体での研究・教育規模が反映。
5位東海国立大学機構約377億円名古屋大・岐阜大の統合法人。
6位九州大学約348億円西日本を代表する巨大拠点。
7位東京科学大学約340億円東京工業大・東京医科歯科大の統合(2024年10月)。
8位筑波大学約321億円研究学園都市の中核。指定国立大学。
9位北海道大学約311億円広大なキャンパス維持と農獣医等の強み。
10位広島大学約236億円地方拠点校の中で抜きん出た配分額。
11位神戸大学約211億円文理バランスの良い大規模総合大学。
12位岡山大学約182億円医療・農学系が強く、研究力も高い。
13位千葉大学約181億円首都圏の大規模総合大学として上位。
14位新潟大学約163億円大規模な医学部・病院を擁する。
15位金沢大学約160億円北陸の研究・医療の拠点。
16位鹿児島大学約159億円離島医療や農学・水産など特殊性が高い。
17位長崎大学約153億円熱帯医学など特定分野で世界的な強み。
18位熊本大学約147億円伝統的な医薬系・工学系の研究力が反映。
19位信州大学約138億円5キャンパス8学部を抱える広域多部局校。
20位富山大学約134億円和漢薬など薬学・医学系が充実。
21位愛媛大学約126億円四国最大の学生数を抱える総合大学。
22位山口大学約125億円工学・農学・医学のバランスが良い。
23位徳島大学約124億円医療系学部が非常に充実している。
24位琉球大学約124億円地域の特殊性と医学部の維持。
25位三重大学約116億円医学部と生物資源学部の規模が大きい。
26位群馬大学約115億円医学部および重粒子線医学等の先端研究。
27位山形大学約111億円有機EL研究などの特色と大規模な組織。
28位鳥取大学約108億円医学・農学(乾燥地研究など)の強み。
29位佐賀大学約108億円医学部附置による配分の維持。
30位香川大学約108億円医療・農学系を含む総合力。

学部学生数(国立大学)

順位大学名学部生数(約)特徴
1位大阪大学15,111人国立大最多。 外国語大学との統合もあり文系も大規模。
2位東京大学14,060人学生総数は多いが、院生比率が非常に高いのが特徴。
3位京都大学12,940人伝統的な総合大学として安定した規模を維持。
4位九州大学11,610人九州の雄。広大な伊都キャンパスに学生が集結。
5位北海道大学11,150人12学部を擁し、農・獣医など独自の強みを持つ。
6位神戸大学11,080人文系学部の定員が多く、伝統的にマンモス校。
7位東北大学10,650人理系が強いが、総合大学として1万人超を維持。
8位千葉大学10,520人首都圏の拠点。園芸・看護など多様な学部構成。
9位広島大学10,410人地方拠点校で唯一の1万人超え(教員養成含む)。
10位名古屋大学10,120人中京圏のトップ。院進学率が高いが学部生も多い。
11位新潟大学10,030人日本海側の最大拠点。医学部から人文学部まで網羅。
12位岡山大学10,010人中四国の教育・医療拠点として大規模。
13位筑波大学9,573人前回のリストから訂正: 独自の学群制で約1万人規模。
14位信州大学9,010人8学部を抱える。県内各地にキャンパスが分散。
15位静岡大学8,250人工学部(浜松)と人文社会(静岡)の規模が大きい。
16位鹿児島大学8,120人9学部を数え、南九州の広範な教育を担当。
17位熊本大学7,930人九州第二の都市にある名門。理・工・医が充実。
18位山口大学7,810人9学部体制。文理のバランスが良い総合大学。
19位金沢大学7,720人3学域20学類という独自の組織形態で運営。
20位琉球大学7,350人沖縄唯一の国立。地域のニーズに応える多学部構成。

旧帝国大で:300〜400億円規模

地方国立大の多くは 100億円台

学部生が同じくらいでも予算規模にかなりの差がある。

  • 教員数
  • 図書館が購読できるジャーナル数
  • 技術職員・研究支援体制

このあたりの違いによる。

学部教育内容は「ほぼ横並び」

大学の暦では セメスター制で前期15週+後期15週で行われる(1年は54週)。

多くの大学では

  • 1年生 教養科目
  • 2年生 基礎専門科目
  • 3年生 専門科目
  • 4年生 卒業研究

単位数 約120単位である。

工学部とはどんな教育機関なのかその内容と歴史を考えてみたい

現在の工学系の学部教育では国際的な認証が進んでいる。

国際的なエンジニア育成標準→ 大学教育 → JABEE認定

指定教科書をみるとほぼ同じであり

学部カリキュラムは、どの大学でも大きな差はない

学部4年間で自分の適性を確認し大学院で進学先を選ぶという選択は合理的と考える。


「研究機関」としての規模


科研費(競争的研究資金)(全大学)

順位機関名配分額(目安)組織種別
1位東京大学約218億円国立大学
2位京都大学約138億円国立大学
3位大阪大学約105億円国立大学
4位東北大学約99億円国立大学
5位九州大学約76億円国立大学
6位名古屋大学約74億円国立大学
7位東京科学大学(※1)約65億円国立大学
8位北海道大学約59億円国立大学
9位慶應義塾大学約42億円私立大学
10位早稲田大学約35億円私立大学
11位筑波大学約34億円国立大学
12位広島大学約28億円国立大学
13位神戸大学約26億円国立大学
14位岡山大学約22億円国立大学
15位理化学研究所約21億円国立研究開発法人
16位千葉大学約19億円国立大学
17位金沢大学約17億円国立大学
18位熊本大学約16億円国立大学
19位新潟大学約15億円国立大学
20位日本学術振興会(特別研究員分等)約14億円独立行政法人
21位長崎大学約13.5億円国立大学
22位近畿大学約13億円私立大学
23位信州大学約12.5億円国立大学
24位立命館大学約12億円私立大学
25位鹿児島大学約11.5億円国立大学
26位大阪公立大学約11.3億円公立大学
27位産業技術総合研究所約11.1億円国立研究開発法人
28位山形大学約10.8億円国立大学
29位徳島大学約10.5億円国立大学
30位日本医科大学約10.2億円私立大学
  • 上位10校の大半は旧帝大
  • 私立大学はわずかで国立大学が健闘

「旧帝大だから科研費が取れる」
というより
「科研費が取れる体制が長年維持されている」


研究者養成

大学院生数(国立大学)

順位大学名大学院生数(目安)特徴
1位東京大学約13,600人学部生数とほぼ同数の院生を抱える、日本最大の研究拠点。
2位京都大学約9,400人伝統的に研究者養成に力を入れ、院生比率が非常に高い。
3位大阪大学約7,900人学部生数1位だが、院生数でも国内トップクラス。
4位東京科学大学(※1)約7,800人旧東工大と旧東京医科歯科大が統合。院生比率が極めて高い。
5位東北大学約7,100人「研究第一」の伝統通り、理系院生の規模が非常に大きい。
6位九州大学約6,600人総合大学としてバランス良く院生を配置。
7位名古屋大学約6,200人大学院重点化により、ほぼ全学部で高い進学率。
8位北海道大学約6,100人12学部に対応する院組織があり、農・理系が特に強い。
9位筑波大学約5,700人学群制度に対応した院組織(学位プログラム制)が充実。
10位広島大学約4,400人地方拠点校として最大。教育学や先端科学の院が大規模。
11位神戸大学約4,200人文系院生の定員も多く、社会科学系の研究も盛ん。
12位岡山大学約3,000人医学・生命科学系を中心に、中四国最大の院生数。
13位千葉大学約2,900人園芸、薬学、看護など専門性の高い院が特徴。
14位東京農工大学約2,400人単科系に近いが、工学・農学の院進学率が極めて高い。
15位熊本大学約2,300人薬学や半導体分野など、特定分野の院生が増加傾向。
16位金沢大学約2,200人融合学域など、新しい学際的な院組織を拡充。
17位新潟大学約2,100人日本海側の総合研究拠点として一定規模を維持。
18位信州大学約2,000人繊維学部などの独自分野で全国から院生が集まる。
19位岐阜大学約1,800人名古屋大との法人統合により、共同大学院等も充実。
20位長崎大学約1,700人熱帯医学など、世界トップクラスの特殊分野に強み。
21位徳島大学約1,500人工学系、医療系大学院の比重が非常に大きい。
22位山口大学約1,450人地方総合大学として、地域産業に即した院教育を展開。
23位静岡大学約1,400人浜松キャンパスの工学系院が中心。
24位鹿児島大学約1,350人鹿児島・離島地域の課題解決に向けた研究科が多い。
25位三重大学約1,250人海水産、生物資源などの農林水産系院が特色。

大学院進学率は

  • 旧帝国大学: 約9割
  • 地方国立大学:5〜6割程度

旧帝国大は戦前から研究者を生産する装置を備えていた。

  • 博士授与を前提とした
  • 講座制(教授+助教授+助手)で分野ごとに層が厚い
  • 附置研究所設置数が多い

地方国立大学は科目制(専門の教員が1人いればいい)ため大学院整備は遅れた

  • 修士課程設置:1960年代
  • 博士課程設置:1990年代
  • 附置研究所設置はあまりない

地方国立大学出身のノーベル賞受賞者は存在するが、地方国立大学を主たる研究拠点とし受賞した例はまだない。

「埼玉大学出身者からノーベル賞が出たから九州大学より優れた研究機関だ」とは誰も思っていない。

研究機関として重要なのは個人の突出した実績ではなく層の厚さ・継続性・再現性である。


地方国立大学の位置づけ

地方国立大学は地域の教育研究拠点

  • 特定分野における研究拠点
  • 実務・産業と近い研究

としての役割を担っている。

国内の研究教育機関としての位置は上位といえるが、上位10校までの旧帝大がかなりの予算を占めている。

※AI支援によって記事を作成しました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました