はじめに
子どものころは
「なんにでもなれる気がする」
そんな万能感があった。
けれど大人になるにつれて、選択肢は少しずつ減っていく。
仕事、家族、健康、親のこと。
気がつくと、
「まあ、人生ってこんなものか」
と思いながら毎日を暮らしている。
それでも、どこかで思う。
「このままで終わりたくない」と。
「ふつうに生きてきた人が、これからをどう生き直せるか」
そのための整理図です。
人生は、一直線ではない
人生はよく「成長の階段」のように語られます。
でも実際は、行ったり来たりします。
ここでは、人生を大きく6つの段階として見てみます。
年齢は目安で、順番が前後しても構いません。
① 子どもの時代|なんにでもなれる気がする
幼いころは、
- 世界は広く
- 自分は中心にいて
- 可能性は無限にある
そんな感覚があります。
これは根拠のない自信ですが、生きる力の原型でもあります。
② 若者の時代|選びはじめる
思春期から若い大人にかけて、
- 得意・不得意が見えてくる
- 比較される
- 進路を決めさせられる
ここで初めて、「全部は選べない」と知ります。
不安も大きいけれど、
同時に、人生を自分で動かし始める時期です。
③ 大人の時代|役割を生きる
社会に出ると、多くの人は
- 仕事の役割
- 家族の役割
- 周囲から期待される立場
を生きるようになります。
忙しい。
責任がある。
でも、気づくと自分の気持ちは後回し。
それでも
「ちゃんとやっている」
「これが大人だ」
そう思って踏ん張ります。
④ 人生を託す|子ども・仕事・次の世代へ
中年期になると、多くの人はこう考え始めます。
- 自分が前に出るより、支える側へ
- 子どもに託す
- 若い人に任せる
これは自然な流れです。
人生のバトンを渡す段階です。
④’(重要)託せなかった
でも、すべての人が
- 子どもを持てるわけではない
- 成功体験を次に渡せるわけではない
ここで多くの人が立ち止まります。
- 空虚感
- 「自分の人生は何だったのか」
- 焦りや後悔
これは失敗ではありません。
現代では、むしろとても多い状態です。
この違和感こそが、
「自分の人生をもう一度引き取る」入口になります。
⑤ 人生を取り戻す
ここから分かれ道があります。
⑤静かに受け入れる
- 無理に変えようとしない
- 今ある日常を肯定する
- 穏やかに生きる
これも、立派な生き方です。
⑤もう一度、自分の人生を生きる
- 年齢に関係なく挑戦する
- 仕事を変える、学び直す、表現する
- やりがいを求める
これは若者の挑戦とは違います。
経験と現実を知った上での挑戦です。
⑥ 振り返り、語る
人生の後半になると、人は自然と
- 振り返る
- 意味づける
- 誰かに残したくなる
これは「立派な自分史」を作ることではありません。
- うまくいかなかったこと
- 回り道
- 矛盾した選択
それらを含めて
「これが自分の人生だった」と語れること。
それが、生ききった感覚につながります。
よくある人生の疑問
なぜ、40代で燃え尽きる人が多いのか?
40代になると、
- 仕事の立場は固まる
- 新鮮さは減る
- 体力は落ちはじめる
それまで「役割」で走ってきた人ほど、
急にエネルギーが出なくなることがあります。
このモデルでは、これは
④ʼ(託せなかった時期)が長引いてしまった状態だと考えます。
本来この時期は、
- 役割が少しずつ軽くなり
- 自分の内側に目が向き
- 「自分は何者か」を考え直す
そんな大事な移行期です。
ところが、
- 役割だけで生きてきた
- 自分の気持ちに向き合う余裕がなかった
- 次に託す先が見つからない
この状態が放置されると、
目的も手応えもないまま力だけ消耗します。
それが「燃え尽き」です。
怠けでも根性不足でもありません。
構造的に起きやすい現象なのです。
なぜ、定年後に何もできなくなる人がいるのか
定年は、仕事という大きな役割が一気に消える出来事です。
そのとき人は、突然こう問われます。
「あなたは、何者ですか?」
もしそれまで、
- 役割に守られてきた
- 自分について深く考えないまま来た
場合、答えが出ません。
、
④ʼ(自分を引き取る時期)を通らずに来た状態です。
役割があるうちは問題が見えません。
でも役割が消えた瞬間、
空白が一気に表に出る。
何もしたくないのではなく、
どこから始めていいかわからないのです。
なぜ、趣味が長続きしないのか?
「何か始めても、すぐ飽きる」
「やってみたけど楽しくない」
これはよくある悩みです。
このモデルでは、
⑤a(受け入れ型)にある落とし穴と考えます。
多くの人は無意識に、
- 昔できていた自分
- 若いころの能力
- 他人との比較
を基準にしてしまいます。
すると、
- できない自分がつらい
- 上達しないと意味がない
- 評価されないと面白くない
となり、続きません。
本当に必要なのは、
⑤b(比較のない新しい開拓)への移行です。
- 下手でもいい
- 成果がなくてもいい
- 初心者として楽しむ
これは若者の挑戦ではなく、
人生後半ならではの自由な挑戦です。
なぜ、高齢になると同じ話を何度もするのか
年を取ると、
同じ昔話を何度もする人がいます。
これは単なる記憶力の問題ではありません。
このモデルでは、
⑥(人生の編集作業)だと考えます。
人は、
- 何度も語ることで
- 出来事の意味を固め
- 「これは自分の物語だ」と確認し
- 誰かに渡せる形を探している
同じ話を繰り返すのは、
人生を整理し、確定させようとする行為です。


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